
商品の特徴・方針
南インド屋の方針は3つあります。この方針がそのまま商品の特徴になっています。
・よそがやっていることはやらない(尖った商品にする)
・自分で買っても楽しめるものを作る(ちゃんとおいしい商品にする)
・おいしいけど高いねと言われる価格にする(原価を高くする)
それぞれを解説していきますので、興味のある方はお付き合いください。

方針1「よそがやっていることはやらない」=「尖った商品にする」
言い換えれば、「スパイス好きのための商品を作る」です。
南インド屋は超零細組織です。店を構えているわけでなく、本を出しているでもなく、テレビに出ているわけでもありません。だから、普通のものを普通に売っているだけでは生きていけません。具体的に言うと「自家製ガラムマサラ」「バターチキンを作るスパイスセット(レシピ付き)」「初めてのスパイス5種セット」などを並べても売れないだろうと考えました。南インド屋の商品の中には、おそらく世界で南インド屋でしか売っていないものがたくさんあります。「ラッサムの素」「サンボルの素」「アグニスープ」「プラオキット」などです。珍しいものを置いているからスパイス好きのお客様が買ってくれるだろうという戦略です。単純ですね。これらの世界で南インド屋しか作っていない商品は、わかりやすく南インド屋の方針を表していますが、それがすべてではありません。競合相手がいない≒市場が小さいから売れない という図式が成り立つので、珍しいものを売るだけでは商売が成り立たないのです。だから、ある程度市場の育っている中で、他社とは違う特徴を持つ製品を作っています。それが、主力商品である「スープカレーを作る魔法の粉」です。市販のスープカレー商品には2つの弱点があります。うまみを添加し過ぎていることと、スパイス感が足りないことです。市販のスープカレー商品は、言ってしまえば、粉末チキンスープと昆布エキスに少しスパイスを加えたものです。食べやすい味ではありますが味が平板で本格的にはなりえません。誰でも食べられる味だけど、スパイス好きの皆様には物足りない味になっているはずです。南インド屋の魔法の粉は、本当にそのままスープカレー屋を開けるレベルの本格的な味です。スープカレーにも色々なタイプがありますが、どちらかというと地味で体に染みこむようなおいしさの、スープカレーの源流に近い味を自宅で作ることができます。この路線のスープカレー商品は、今のところ南インド屋でしか作っていません。だからたくさんの人に支持されているのだと思います。という具合に、競合商品がある場合でも、他とは違う、「スパイス好きのための商品」を作っています。

方針2「自分で買っても楽しめるものを作る」=「ちゃんとおいしいものを作る」
店員Aは以前、札幌の三越婦人服売り場に立っていたことがあります。何が辛いかと言うと「この服はデザインはよくないし縫製もいま一つだし似合ってもいないな」と思っているものを「お似合いです」と言って売らなければいけないのが辛かったそうです。逆に言うと、自分が買っても楽しめるようなものを作るのは、単純に楽しいことです。宣伝も楽です。自分が心からおいしいと思っているものを「おいしいですよ!」と叫ぶことは簡単です。だから南インド屋では、自分が買っても楽しめるくらいようなちゃんとおいしいものを作っています。これは、理想を追い求める、こだわりぬいた味、という類の話ではなく、運営上必要なことだと考えています。

方針3「おいしいけど高いねと言われる価格にする」=「原価をかける」
これは上記2つの方針から導かれることです。安売りをするということは、月に1000個売らなければ儲からないということです。1000個売るためには、「スパイスがあまり好きじゃない人」が喜ぶような商品にしなければいけなくなります。ここ数年でスパイスの値段はどんどん上がっています。特にここ1年ほどのグリーンカルダモンの値上がりはすさまじく、平気で倍額以上になっています。安売りをしていると、たとえばチャイセットを作っている時に、「あ…ここでグリーンカルダモンを減らせば儲けば増えるな…」という考えが頭をよぎってしまいます。だから、「コストがかかっても良いからとにかくおいしいものを作ろう」と思える価格設定をしています。
以上、長くなりましたが、このような方針のもとで南インド屋は運営されていて、それが商品にも反映されています。だから、尖っていて、ちゃんとおいしくて、原価がかかっている分少し値段は高い、という商品を南インド屋は提供しています。